コンクリートの腐食はなぜ生じるのか
汚水に含まれている硫黄分が細菌(硫酸塩還元細菌と鉄酸化細菌)によって硫化水素に変えられます。この硫化水素は壁面に棲息している細菌(硫黄酸化細菌)によって硫酸に変化します。さらにコンクリートの主成分である水酸化カルシウムはこの硫酸の作用により硫酸カルシウム(二水石膏)に変化します。これが腐食といわれているものです。
一般的に硫黄細菌による腐食は起こっているのですか
下水道施設において硫化水素ガスが発生する可能性の高い場所では、腐食する危険性があります。
建設省土木研究所 下水道部 下水道研究室(現 独立行政法人土木研究所)では全国51ヶ所を対象に処理場及びその処理区内の管渠施設を対象にアンケート調査を行っています。
この結果によれば、多くの施設で腐食が生じていることが報告されています。
コンクリートの硫黄細菌による防食方法はどのようなものがありますか
従来、コンクリートを酸から守るための方法として、一般的には樹脂をコンクリート表面に塗布するか、樹脂で作られたシートを貼付ける方法が採られております。
特に樹脂の塗布については、「下水道コンクリート構造物の腐食抑制技術及び防食技術指針・同マニュアル」が平成14年12月に日本下水道事業団の指針として定められております。
外国でも古くより実施されており、コンクリートパイプに対するものとしてはオーストラリアヒュームのプラスチライン(Plastiline)が有名です。
「ビックリート」とは
コンクリートの中に硫黄酸化細菌と鉄酸化細菌に対し防菌効果のある物質「ビック剤」を混入したコンクリートの商品名です。
「ビック剤」は、ニッケルとタングステンに数種の特殊物質を混入したもので全て鉱物質であるので非常に安定した材料です。
このビックリートを使用し各種のコンクリート製品を製造することができます。
代表例としてヒューム管、組立マンホール類、ボックスカルバート、U字溝、各種蓋 セグメント等です。
「ビックリート」はなぜ腐食に強いのか
下水道施設のコンクリートの腐食は硫黄酸化細菌と鉄酸化細菌によって生成される硫酸によるものです。従って、これらの細菌の働きを止めることによって硫酸の生成が制御されます。
「ビックリート」はこの細菌の働きを止めることができ、これによりコンクリートの腐食が生じないのです。
尚、コンクリート中の水酸化カルシウムと硫酸が反応し生成する硫酸カルシウム(二水石膏)は、非常に軟らかな物質で強度はほとんどありません。
「ビックリート」の耐酸性は
「ビックリート」の防菌効果は継続するのか
「ビック剤」はコンクリートへの悪影響はないのか
「ビック剤」は鉱物質ですので、これらの混入による圧縮強さ、引張り強さ、弾性係数等の性状は、通常使用されているコンクリートと変わらず、また、水に難溶性物質ですので通水による水質の悪化はありません。
「ビックリート」製品の環境への影響は
「ビックリート」製品の規格、強度等は
「ビックリート」の製造方法は
「ビックリート」の製造は、通常のコンクリートの製法と変わらず、「ビック剤」をバッチャープラントのコンクリート混練時に混和剤として混入します。
但し、「ビック剤」の混入に関しては厳しい品質管理を要求し、バッチャープラントの混入記録を義務づけています。
「ビックリート」の品質証明はどのように行っているのか
「ビックリート」は、外観上通常のコンクリートと変わりません。従って、当社では次のような方法で厳しい品質管理を実施しております。
・コンクリート製造時にバッチャープラントにて「ビック剤」の混入記録を行い必要に応じてユーザーに提示する。
・製品には、ビックリート製品であることを示すマークを付す。
・製造後の製品は、「ビック検出器」によって、ビック剤の混入を確認します。
尚、強さ・形状・寸法等の管理は通常の製品と同様に行っております。
「ビックリート」の効果を証す試験は
「ビックリート」と通常コンクリートを用い、腐食の生じている処理場にて暴露試験を行っております。さらに、経年したビックリート管路よりコアサンプルを採取し、劣化のないことを確認しております。
又、硫黄酸化細菌と鉄酸化細菌の生育状況及びビック剤の防菌メカニズム等につきまして、実験により証明されております。
「ビックリート」の公的認定は
1999年3月に(財)下水道新技術推進機構(現 公益財団法人 日本下水道新技術機構)の「建設技術審査証明(下水道技術)」を取得し、2004年3月、2009年3月、2014年3月、2019年3月に継続的に更新しております。
また、平成16年9月に(社)日本下水道協会より「下水道用耐食性鉄筋コンクリート管」としてⅡ類認定適用資器材に指定されております。平成22年には、適用認定範囲の拡大に伴い、資器材名が「下水道用耐食性コンクリート製品」に変わり、管,マンホール,ミニシールドセグメントが認定に加わりました。